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『スマートコミュニティ』という概念は、2011年3月の東日本大震災以降における新たなエネルギーシステムのあり方の検討の中で、社会的認知が高まってきました。しかし、「スマート(賢い)」という抽象的な言葉と、「共同体」や「人々の繋がりやネットワーク」などを指す「コミュニティ」という解釈が広くて実態が捉えづらい言葉の組合せということもあって、その具体的な姿や社会的役割、将来的なあり方を共有するには難しい事象です。
実際に「スマートコミュニティ」の定義は何かとの問に対する回答は、「統一された定義はない」とされます。なぜならば、スマートコミュニティで中心的な役割を果たす情報通信機器やシステムの技術革新・開発が急速に進展し、その社会的な活用範囲が拡がっているため、関連する政策やビジネスの目的が日々変化してきているからです。そして、各当事者が活用可能な情報機器やシステムを選択して、自ら設定した目的や目標の到達点を「スマートコミュニティ」と呼称していることから、似て非なる解釈が生じています。それは、国家間でも同様であり、国の経済水準や社会インフラの発展度合いなどによって、何を「スマート」とするか対象も異なります。
そうした事情もあってか、最近ではこの表現を見聞きする機会が減ってきている感があります。一方で、「スマートシティ」や「スマートグリッド」、「スマートハウス」、そして「スマートメーター」など、数多くの「スマート」という用語が特に説明もなく喧伝されております。また、IoT/AIの技術の開発・普及に伴い「Society5.0」や「Indusry4.0」などスマート化に関する新たな概念なども次々と提唱されております。このようにしてスマート化の取り組みは、交通、農業、医療、介護、教育、金融、商取引などエネルギーシステムに限らず様々な分野に波及し、より一層理解が複雑化してきております。
このような社会システムの変化はエネルギー需給構造に他律的に影響を与えるものであり、情報技術の発達・普及に伴う社会変化の中で、エネルギーシステムの変化と影響が「こうなる」と想定/分析が必要になります。しかしながら、そうした分析は、社会的注目が高まって間もないこともあり、十分行われてこなかったように思われます。
本サイトは、こうした背景を踏まえて、様々な業界・分野における社会のスマート化のキートピックを取り上げ、その事象の解説や考慮すべき着眼点等を情報発信することで、読者の皆様の理解や新たな論考を促進する一助になることを目指して開設することに致しました。今後の社会情勢の変化や世の中の関心に応じて随時追加していく予定でございますので、皆様からのご批判やご意見を頂戴できれば幸甚です。
2018年3月 スマートコミュニティーグループ 研究理事 工藤 拓毅
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