理事長挨拶

豊田 正和

豊田 正和

 2019年の世界は、昨年にも増して大きく変動しています。

 国際面では、①国際ルールや同盟国との協力関係も無視しかねないトランプ政権の「America First」政策、及びBrexitなどに代表されるEUの求心力の低下がもたらす欧米中心型の世界運営の揺らぎ、②米中の経済冷戦の深化、③中東における調和路線から対立路線への移行、④COP24においてまとめられたParis合意の実施細則を踏まえた気候変動対応の本格化などがあげられます。
国内面では、昨年半ばに閣議決定された、第五次エネルギー基本計画の加速的な実現です。同計画では、①2030年度のエネルギー・ミックスを維持する一方で、②気候変動の視点から「2050年を見据えた複線シナリオ」の追求を明らかに致しました。主要課題としては、原子力発電所の再稼働のスピードアップ、急速に普及する再生エネルギーのコストダウン、加えて水素に代表される新たなゼロカーボン・エネルギーの開発利用の促進などがあげられます。  

 エネルギーは経済活動の重要な基盤の一つですが、日本はエネルギー自給率が2015年度で7%という、極端なエネルギー資源小国です。エネルギーの安定供給の確保と合理的な価格での供給は、日本経済発展の基本的な前提です。同時に、温暖化防止のための適切な対策が求められています。これらの3つのE(エネルギー安全保障、経済効率性、及び環境保全)」に、福島の原発事故からの教訓としての「S(安全性)」を加えた「3E+S」は、日本だけではなく、成長するアジアの国々を含め世界共通の課題であり、相互依存性を深めた国際社会では、日本やアジアの動向が世界に大きな影響を及ぼしています。

 当研究所は時代の要請を見据え、エネルギー政策や環境政策について、事実を直視した客観的分析と将来予測を踏まえた適切な政策提言などにより、国内外に確固とした地位を築いて参りました。今後も内外の政府・産業界・有識者・調査機関等との緊密なネットワークを活用し、エネルギー問題と気候変動問題をコインの表裏ととらえて、経済成長に貢献するための最適解を見出すことを着実に目指して参る所存です。当研究所の調査分析と政策提言が、政策形成や企業戦略構築に、タイムリーに貢献できるよう取り組んで参ります。とりわけ、毎年7月と12月には日本の短期エネルギー需給を見通す分析を公表し、10月には、中長期を見据え、アジアや世界への政策的メッセージ提供に焦点を置いた弊所独自の長期の世界エネルギー見通し「IEEJ Outlook」を発表しています。不透明なエネルギー情勢の理解と将来に向けた政策・戦略の検討にお役にたてば幸いです。

 設立後53年目を迎え、当研究所は、エネルギー情勢の中長期的、かつ構造的な変化を頭に描きつつ、調査ならびに政策・戦略提言活動を一層充実させていきたいと考えています。関係各界の倍旧のご支援・ご指導をお願い申し上げます。

           日本エネルギー経済研究所 理事長 豊田正和

PDFファイル:豊田理事長 経歴