理事長挨拶

豊田 正和

豊田 正和

 2018年も後半に入りました。
 経済は、世界的に好調ですが、内外のエネルギー情勢は不確実性を深めています。貿易戦争も辞さない米国のトランプ政権の対外政策が、その傾向を助長しています。

 国際面では、昨年6月にはトランプ政権が気候変動に係るパリ合意からの離脱を宣言したうえ、本年には5月の米国のイラン核合意離脱による中東情勢の混迷や米朝首脳会談後の北東アジアが地政学的不透明性を強めています。原油価格については、1月に、ブレントが3年1か月ぶりに、1バレル当たり70ドルを超えた後、瞬間的に80ドルを突破しましたが、1~6月平均では71ドル強となりました。ただし価格が上がると、米国シェール・オイルが増産することや世界経済リスクもあり、一本調子に上昇を続けるとみる向きは少ないようです。
 国内面では、原子力規制委員会の審査を終えて、9基の原子炉が再稼働を始めたのですが、昨年12月の広島高等裁判所の決定により、伊方3号機の稼働が差し止められるなど、司法リスクは未だぬぐえません。更に、一部の地方公共団体は依然、原子力に対して消極的立場を変えていません。そうした中で、第五次エネルギー基本計画がまとめられました。2030年度のエネルギー・ミックスを維持する一方で、気候変動の視点から「2050年を見据えた取り組み」を明らかに致しました。

 エネルギーは経済活動の重要な基盤の一つですが、日本はエネルギー自給率が2015年度で7%という、極端なエネルギー資源小国です。エネルギーの安定供給の確保と合理的な価格での供給は、日本経済発展の基本的な前提です。同時に、温暖化防止のための適切な対策が求められています。これらの「3つのE(エネルギー安全保障、経済効率性、及び環境保全)」に、福島の原発事故からの教訓としての「S(安全性)」を加えた「3E+S」は、日本だけではなく、成長するアジアの国々を含め世界共通の課題であり、相互依存性を深めた国際社会では、日本やアジアの動向が世界に大きな影響を及ぼしています。

 当研究所は時代の要請を見据え、エネルギー政策や環境政策について、事実を直視した客観的分析と将来予測を踏まえた適切な政策提言などにより、国内外に確固とした地位を築いて参りました。今後も内外の政府・産業界・有識者・調査機関等との緊密なネットワークを活用し、エネルギー問題と気候変動問題をコインの表裏ととらえて、経済成長に貢献するための最適解を見出すことを着実に目指して参る所存です。当研究所の調査分析と政策提言が、政策形成や企業戦略構築に、タイムリーに貢献できるよう取り組んで参ります。とりわけ、毎年7月と12月には日本の短期エネルギー需給を見通す分析を公表し、10月には、中長期を見据え、アジアや世界への政策的メッセージ提供に焦点を置いた「IEEJ エネルギー・アウトルック」を発表しています。不透明なエネルギー情勢の理解と将来に向けた政策・戦略の検討にお役にたてば幸いです。
 設立後52年目を迎え、当研究所は、エネルギー情勢の中長期的、かつ構造的な変化を頭に描きつつ、調査ならびに政策・戦略提言活動を一層充実させていきたいと考えています。関係各界の倍旧のご支援・ご指導をお願い申し上げます。

日本エネルギー経済研究所理事長 豊田正和

平成30年7月