理事長挨拶

豊田 正和

豊田 正和

 昨年6月に、日本エネルギー経済研究所は、設立50周年を迎えました。2回にわたる国際シンポジウムの開催、内外のエネルギーの専門家である特別客員研究員を交えた機関誌「エネルギー経済」特別号の発刊、大学生とのエネルギー対話の実施など、50周年記念行事を成功裏に終えることができました。ひとえに、内外の関係各界の皆様のご指導・ご支援の賜物と心より御礼申し上げます。
 2017年のエネルギー情勢は、石油価格動向、地政学的不安定性に加えて、米国新大統領による新政権発足など、不確実性を益々高めています。
 国際面では、米国新政権は、3月に、前政権の地球温暖化規制を見直す決定をいたしました。原油価格については、昨年11月のOPECと非OPEC諸国による石油減産合意の順守状況や、石油需給のバランス化の動向から目を離せません。一方、国内では、3月に大阪高等裁判所で、原子力発電所の再稼動にかかる大津地方裁判所の差し止め仮処分が退けられました。また、広島地方裁判所でも、新たな再稼働の差し止め請求が退けられました。司法の場では、予測可能性が出てきましたが、一部の地方公共団体は、依然、原子力に対して消極的立場を有しています。原子力以外でも、野心的な省エネルギー目標、再生エネルギーの低コスト化、原発と電力・ガス自由化との両立など、エネルギー・ミックスの実現に向けた課題は山積みです。

 エネルギーは、経済活動の重要な基盤の一つですが、日本は、エネルギー自給率が6%程度という、極端なエネルギー資源小国です。エネルギーの安定供給の確保と合理的な価格での供給は、日本経済発展の基本的な前提です。同時に、温暖化防止のための適切な対策が求められています。これらの「3つのE(エネルギー安全保障、経済効率性、及び環境保全)」に、福島の原発事故からの教訓としての「S(安全性)」を加えた「3E+S」は、日本だけではなく、成長するアジアの国々を含め世界共通の課題であり、相互依存性を深めた国際社会では、日本やアジアの動向が、世界に大きな影響を及ぼしています。

 当研究所は、時代の要請を見据え、エネルギー政策、環境政策について、事実を直視した客観的分析と将来予測を踏まえた適切な政策提言などにより、国内外に確固とした地位を築いて参りました。今後も、内外の政府・産業界・有識者・調査機関等との緊密なネットワークを活用し、エネルギー問題と気候変動問題を、コインの表裏ととらえて、経済成長に貢献するための最適解を見出すことを着実に目指して参る所存です。当研究所の調査分析と政策提言が、政策形成や企業戦略構築に、タイムリーに貢献できるよう取り組んで参ります。とりわけ、毎年7月と12月には、日本の短期エネルギー需給を見通す分析を公表し、10月には、中長期を見据え、アジアや世界への政策的メッセージ提供に焦点を置いた「アジア・世界エネルギー・アウトルック」を発表しています。不透明なエネルギー情勢の理解と将来に向けた政策・戦略の検討にお役にたてば幸いです。

 設立後、51年目を迎え、当研究所は、次の50年のエネルギー情勢の変化を頭に描きつつ、調査、政策・戦略提言活動を、一層充実させていきたいと考えています。内外の関係各界の倍旧のご支援・ご指導方お願い申し上げます。

日本エネルギー経済研究所理事長 豊田正和

平成29年4月