アジアのエネルギー需給・安全保障・環境問題等を考える上で、そのエネルギー需要が急激に増大しつつある中国、インドの2カ国の動向は非常に大きな影響力を有している。
両国では、増大するエネルギー需要に対応するため、今後のエネルギー選択、国内外でのエネルギー資源開発等の面で新たな動きを見せており、その動向およびその背後にあるエネルギー政策の展開状況はわが国にとって重要な関心事となりつつある。また、これらの巨大市場に対して、メジャー、産油国等、国際エネルギー産業からのアプローチも強化されており、その進捗および結果としての影響についても関心が高まっている。
以上の認識に基づき、本レポートでは、まず第1章で中国のエネルギー市場・政策動向についてまとめた。最近の石炭消費減少の背景、中長期的には再び大幅増大が予想されるエネルギー需要・輸入についてまとめ、それに対応するための重要政策課題を論じている。それらは、天然ガス利用促進策、石炭高度利用、新・再生可能エネルギー促進、石油供給セキュリティ政策等である。石油供給セキュリティ政策については、最近の海外女流部門進出動向、中東産油国との関係強化、石油備蓄政策動向についてまとめた。またWTO加盟を控え、一層の国際競争力強化に乗り出している石油産業政策についても論じている。
続く第2章では、同様の観点からインドのエネルギー市場・政策動向を分析している。増大するエネルギー、特に石油輸入に対応して、インドではまず国内石油・ガス開発促進のため、新政策展開が図られている。また、中国と同様、国営石油会社による海外上流部門進出への動きが強まっている。また、石油産業における規制緩和(価格規制の撤廃と販売部門自由化)が予想されており、その潜在的な影響についても論じている。さらに、エネルギー源分散化、環境対策のための天然ガス利用促進(特にLNG輸入の拡大)の動きとその制約条件についてまとめた。その他にも、インドのエネルギー源の太宗である石炭利用の状況と今後について、課題や問題点を整理した。
これらを受けて、第3章では、中国、インド両国のエネルギー市場・政策動向による国際市場やわが国へのインプリケーションについてまとめた。両国の急激な需要・輸入の拡大は特に短期的には市場不安定化要因となり得る可能性があること、その一方、両国の需要拡大、規制緩和と市場自由化の動きは国際エネルギー産業にとって重要な藤氏機会となっていることをまとめた。特に後者については、メジャー、中東産油国の取組みについても論じている。最後に、わが国にとっては、エネルギー安全保障確保の観点から、そして潜在的な投資機会確保の観点から両国の動向に留意し、必要な協力、コミットメントを図ることが重要な点を指摘している。
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