本稿では,二酸化硫黄排出量を5要因に分解する要因分解モデルを開発しそれを用いて日中両国における二酸化硫黄の排出要因に関する実証分析と汚染対策に関する比較分析を行った。以下の知見が得られた。
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日本では,二酸化硫黄排出量は60年代後半の500万トン規模をピークに急速に減少してきたがその原因は環境法の整備を期に脱硫対策エネルギー関連対策などの総合環境対策が取られ経済成長を除くすべての要因が削減要因して機能したことである。
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中国では二酸化硫黄排出量が70年代初期の700万トン弱から90年代半ばの2400万トンへ増加してきた。その原因は脱硫要因が削減要因として殆ど機能しておらずその他削減要因の寄与が日本ほど大きくなかったのに対し経済成長率が日本より遙かに高く増加要因の寄与が削減要因の寄与を遙かに上回ったことである。
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環境規制政策体系をみると日本は排出量規制と総量規制および燃料規制を中心としているが中国は濃度規制と脱硫装置規制を中心としており量的規制と燃料規制を行っていない。一方エネルギー環境政策をみると両国とも省エネルギー対策を強化したが構造転換(低硫黄化石エネルギーへの転換、非化石エネルギーへの転換)に関しては日本が明確に促進対策を取ったが中国は殆ど取らなかった。
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中国にとって、経済成長の維持と硫黄酸化物排出量の削減を同時に実現するために省エネルギー対策の強化と同時に量的規制を実施すること、脱石炭化政策及び非化石エネルギーへの転換政策を取ることが、最重要の課題である。
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