カリフォルニア州電力危機について
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【研究の目的】
本報告は、2000年夏期、及び2000年〜2001年冬期におけるカリフォルニア州電力危機の起こった背景と要因について明らかにすることを目的とする。
【主な結論】
- 経緯
1−1 2000年夏期
- 2000年夏のカリフォルニアISOのピーク需要は約4,200〜4,300万kWであったのに対し、約800〜1,000万kWの電力を補助的サービス市場やリアルタイム市場で調達しなければならなかった。
- 卸電力価格が高騰し、上限に達する場合もあった。
- 州南部を供給エリアとするサンディエゴ・ガス&エレクトリック(SDG&E)の小売料金が2000年8月、全米平均(8.26セント/kWh(昨年))の約2倍に急騰。
1−2 2000年〜2001年冬期
- 2000年夏よりの卸電力価格の高騰を受け、小売料金を凍結されている電力大手二社(PG&E、SCE)の経営が悪化。
- 2001年1月4日に電気料金の引き上げが認可されたものの、上昇幅は小さく、抜本的な解決策が打ち出されなかった。
- その後、格付け機関による格下げにより、二社は資金繰りが大幅に悪化。折からの供給不足に加え、暴風雨などによる影響もあり、2001年1月17日、18日に停電実施。
- 2001年1月19日に、電力調達法案が施行され、州による電力調達・転売が可能に(2月15日に失効する時限立法)。予算は4億ドルであるが、2週間から1ヶ月分と見られており、二社の倒産の危機は強まっている状況。
図 1 カリフォルニア州における卸電力調達コストと小売価格の比較 |
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(出所)卸電力調達コストはCalifornia ISOプレゼンテーション資料、"Market Analysis Report", November 30, 2000、小売価格は米国DOE EIAホームページ |
- 今後の展望
州は、今回の危機に対して、大幅に自由化を見直す方向で検討している模様である。大きな柱は、当面は州による電力調達を拡大する方向で、長期契約及び州営による電源確保の強化を模索している。また、それに伴い電力取引所(PX)は廃止される見込みで、カリフォルニア州の電力自由化は、大きな岐路に立たされていると言えよう。
今回の電力危機の背景には、(1)設備(電源・送電線)不足、(2)卸電力市場での価格高騰、が大きな要因として注目される。設備不足では、自由化の下での設備投資インセンティブを誘発するための制度設計が十分でなかったことが考えられる。州は新規発電プラントの評価・認可プロセスの迅速化や長期契約の導入で対応を図っている。卸電力市場での価格高騰については、需給の予想外の逼迫状況に加え、発電事業者の市場支配力や、天然ガス等の燃料価格の高騰、価格決定メカニズムの問題等が言われている。しかし、どれも十分な説明力があるとは言えず、今後詳細な分析が必要である。
カリフォルニア州の電力危機は未だ進行中であり、現在州による抜本的な解決策が検討されているところである。最終的には、これまでのPXを中心とした電力取引から相対取引中心の市場を目指すものと考えられる。停電という異常事態を招いた今回の電力危機を踏まえ、新しい制度設計が具体的にどのような姿になるのか、わが国も注視する必要がある。
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