中東・中央アジア諸国の原油・天然ガス輸出パイプライン計画の現状
エネルギー動向分析室 研究員 小森 吾一
中東・中央アジア諸国は自国の原油・天然ガスを輸出するために、様々な輸出パイプラインを保有し、稼動させるとともに、新規ルートの建設も計画している。新規ルートのパイプラインは、それぞれの域内、トルコ、およびアジアが仕向け地として検討されている。さらに、中東・中央アジア諸国は、米国による対テロ報復攻撃が行われていて、現在、世界が注目しているアフガニスタンの周辺地域にある。そこで本稿では、中東・中央アジア諸国における既存・計画中の原油・天然ガス輸出パイプラインの状況を述べる。


*中東の原油・天然ガス輸出パイプラインに関して
(1) イラク、サウジアラビアの原油輸出インフラが注目される。イラクはキルクーク〜ジェイハン間パイプラインとペルシャ湾岸積み出し基地により国連の監視下で原油を輸出。サウジアラビアの紅海向けペトロラインはペルシャ湾有事の際にもルート多様化効果を持つ。
(2) 現時点では大規模な新規の原油輸出パイプライン建設計画なし。
(3) イランのトルコ向けガスパイプラインは2002年には稼動予定。インド向けについてはパイプライン通過国パキスタンとインドとの政治的関係が良くないために、プロジェクトの進展には多くの困難な点が残されている。カタールはバーレーン・クウエート向け、さらにはUAE・オマーン・パキスタン向けのDolphinプロジェクトを計画中。

*中央アジアの原油・天然ガス輸出パイプラインに関して
(1) 中央アジア諸国にとって膨大な埋蔵量が期待されるカスピ海周辺地域の原油・天然ガスをどのルートで輸出するかが当初からの課題であり、ソ連邦崩壊の1991年末以来、ロシア経由ルートを回避する新規のパイプライン建設構想の実現に動き出した。
(2) トルクメニスタンが計画していたアフガニスタン経由パキスタン向けおよびカスピ海海底パイプラインは「ロシア経由ルートが使えない」、さらには「その使用を回避したい意向」を前提としていた。しかし、ロシア経由ルートの利用が再開された現状、これら2つのルートの実現性(経済性)を巡る環境は大きく変化している。