天然ガスからの液体燃料(GTL)の市場性について
第2研究部 石油グループ
マネージャー 森田 裕二

 天然ガスから液体燃料を製造し、天然ガスの輸送手段として、あるいは石油に代わる燃料として利用しようとする技術に対する関心が高まっている。この技術は基本的には最初に天然ガスを水素と一酸化炭素から成る合成ガスに転換し、次いでこの合成ガスからFT合成法(Fischer Tropsch)等により液体燃料を製造するという2つの段階から構成される。この技術から得られる液体燃料(FT合成油、メタノール、DME(ジメチルエーテル、Di-Methyl Ether ))は総称してGTL(Gas to Liquid)と呼ばれ、LNGと同様に硫黄分、芳香族分等を含まないクリーンな燃料である。
 本研究は、GTLがわが国においてどのような市場にどのような形態で受容されるかを把握することを目的としたもので、GTLのCIF価格を試算し、原油価格が20ドル/バレル程度の環境下で、石油製品、LPガスあるいはLNGと代替し得る可能性を検討した。
 その結果、原料ガス価格が0.5〜1ドル/MMBTU の範囲の場合、採算性から見て最も可能性が高いと見られるのは軽油及びLPガス代替のDMEであることがわかった。
 FT合成油から得られるFT軽油は、石油系軽油と品質が同一と見なされる時には原料ガス価格が0.5ドル/MMBTU程度でなければ採算性の確保が難しい。ただ、クリーン燃料としてのプレミアムが10ドル/バレル程度与えられると原料のガス価格が1.5ドル/MMBTUであっても十分に採算性が確保できるものと判断された。
 メタノールは価格的に競争力が低く、法制面における制約とも相俟って著しく導入が進展すると見るのは難しいが、改質が容易であるという特性を有することから、分散型発電用の燃料電池あるいは自動車用燃料電池の開発の動向を見守る必要がある。