エンロンの事業戦略(3)
−2000年・2001年第1・2四半期の特徴と最近の動向−
エネルギー動向分析室 研究員 近藤 大輔

 当研究所においては,過去2回に分けて「エンロンの事業戦略」と題して分析してきた。1回目は,エンロンの基本的な事業内容と戦略ならびに収益構造を追った。2回目は,様々な事業セグメントの中でインターネットを活用したEコマース(電子商取引)への取り組みならびに情報技術(IT)革命の進展にあわせたブロードバンド事業の立ち上げを中心に分析し,ガス発電卸事業者が情報通 信事業へ傾注していこうとする様子を紹介してきた。その後もエンロンは,事業主体であるホールセール部門での収益増大を牽引役として,小売・サービス事業,輸送・配給事業のそれぞれにおいて事業規模が拡大し成長を続けている。

 こうした成長を続けていく中で,最近のエンロンには少し異変が見え始めてきている。
  2001年8月14日CEOジェフリー・スキリング氏の突然の辞任発表や最近の株価下落,そしてこれまで積極的に投資を行ってきた海外資産の売却を進めていることなどから窺い知ることができる。また,新規事業としてエンロンが多大な期待をかけているブロードバンド事業も思い通 りには利益を生んでいないようである。

 ブロードバンド事業は2000年・2001年上期と唯一利益を生んでいない事業セグメントとなっており,その赤字幅は徐々に拡大している傾向にある。北米に端を発したIT不況による煽りを受けブロードバンド市場は停滞しているのが現状である。

 上述したCEOの辞任や株価の下落,そして海外プロジェクトでの係争などから金融市場ではエンロンの投資・経営動向をより厳しい目で見るような傾向もある。このような状況下,エンロン自身も事業戦略の立て直しを図ってきており,資産売却の動きを加速させている。

 本稿では,2000年の業績と特徴ならびに2001年第1四半期および第2四半期の業績と特徴を紹介するとともに,エンロンを取り巻く最近の状況変化について纏めることとする。

 なお、2001年10月16日発表エンロンの第3四半期決算によると、特別経費を除く収支は3億9300万ドルの黒字となったが、純損益は6億1800万ドルの赤字となった。