アジア地域を中心とする世界の石油製品需給分析

−平成12年(2000年)度石油製品需給動向等計量分析モデル調査−

計量分析部 計量分析グループ マネージャー 山下ゆかり
計量分析部 計量分析グループ 主任研究員 山口栄二
計量分析部 計量分析グループ 研究員 田代秀樹

 日本は石油需要の99%以上を海外からの輸入に頼っている。そのため、世界の石油需給、とりわけ我が国周辺の東アジア各国の石油需給に強く影響される。
*東アジアとは、中国、香港、台湾、韓国、シンガポール、ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムを指す。

 本調査では、2004年、2008年の国(地域)別石油需要を計量分析モデルにより推計した。さらに各国(地域)の石油精製能力ならびに原油及び石油製品貿易を考慮したLPモデルにて、国(地域)別の石油製品生産量を推計し、各国(地域)ごとに石油製品の需要量と供給量の差、つまり石油製品の需給バランスを分析した。
 アジア各国は1997年以来の経済危機からの回復過程にあり、今後の経済回復のシナリオとして基準・低成長の2ケースを想定した。

「基準ケース」: 日本を除く東アジア地域の1999年から2004年までの経済成長率を年率6.3%に設定した。

「低成長ケース」: アジア経済危機による経済低迷からの回復が、基準ケースよりやや遅れることを想定し、2000年以降の経済成長率を「基準ケース」より1.0%ポイント低く設定した。

 「基準ケース」の2004年における日本を除く東アジア地域の石油製品供給量(石油精製設備の稼働率を考慮した生産量)と需要量を比較すると燃料油(ガソリン、ナフサ、灯油、軽油、重油)では約11万b/dの輸入ポジションと需給がバランスする近傍にある。また燃料油にLPGとその他石油製品(アスファルト、潤滑油など)を加えた石油製品合計では、約35万b/dの輸入ポジションとなる。これは台湾の製油所新設、ならびに中国の製油所の再編による稼働率の向上により、東アジアにある程度の生産余力は発生するものの、石油需要が堅調に回復すると見込まれるため、需給はバランス近傍に落ち着くと解釈できる。一方2008年においては、東アジアの石油需要は順調に増加し、燃料油で54万b/d程度、石油製品合計で83万b/dの輸入ポジションとなる見込みである。一方、東アジアの石油需要回復が鈍い「低成長ケース」では、2004年、2008年それぞれの時点において、燃料油では12万b/d(2004年)、4万b/d(2008年)の輸出ポジションとなり、燃料油については供給超過となることが予測される。
 本文は、平成12年度に経済産業省資源エネルギー庁より受託した受託研究の報告要旨である。
 この度、経済産業省の許可を得て公表できることとなった。経済産業省関係者のご理解・ご協力に謝意を表するものである。