通信分野においては、技術がインフラストラクチャー(インフラ)の構造や機能に変化を及ぼし、延いては産業自体の性格も変化させている。これによって、通信事業は、他の産業や消費者の社会生活へ多大な影響を与えている。そこには、インフラの性質の変化によって、市場構造、産業構造の変化が見られる。
本稿では、インフラの変容とサービスの提供との関係、これによる産業構造と事業形態、並びに規制との関係を電力、通信のインフラについて考察する。
考察の結果、情報と電気という財の性質が異なることから、インフラとしての性質も異なり、市場構造・産業構造に違いが見られる。特に、技術進歩の著しい通信事業では、ハードとソフトの分離によって、重層的なサービスが提供されており、事業体の分離や統合が行われている。電力系統は、通信ネットワークに比べ、共用性が高く、系統というハード間の競争は考えられていない。この為、競争原理の導入についても、有効に機能させるためには、制度設計は異なってくる。電力事業において、公正な競争を実現するためには垂直分離が必要であると考えられる。垂直分離すると安定供給の問題はあるが、しかし、それは、競争の導入によって、競争が活発化すれば必ず出てくる問題であり、必ずしも垂直分離に直結した問題ではない。但し、インフラの競合性については、技術によって変化していく。
また、競争上の問題は、その時の制度、規制などによって、問題の生じ方も違ってくる。但し、通信にしても、電力にしても、ある市場における力を利用して、関連する市場で競争上有利にするという戦略は常に起こりやすい
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