太平洋エネルギー協力会議2000(SPEC2000)
常務理事 藤目和哉


太平洋地域におけるエネルギー問題およびエネルギーに関する国際協力のあり方を検討する場として、1986年より開催されてきた「太平洋エネルギー協力会議」も2000年で通 算15回目を迎えた。本年の会議は、2000年2月15日、16日の両日、ホテルオークラにおいて、「アジア地域のエネルギー安全保障」というテーマの下に開催され、内外21カ国から計924名の参加を得て活発な意見交換がなされた。この会議は外務省、通 商産業省、日本経済新聞社の後援をうけ、エネルギー総合推進委員会、国際石油交流センター、省エネルギーセンター、新エネルギー・産業技術総合開発機構、海外電力調査会・電力国際協力センター、日本国際問題研究所、太平洋コールフロー推進委員会、日本エネルギー経済研究所の共同主催で開催されたものである。 会議は3つの基調講演、4つのセッション(中東石油、天然ガス、電力利用、環境問題)、パネルディスカッションにより構成されていた。以下、会議全体の流れのポイントを整理する。

アジアのエネルギー安全保障は、環境保全と一体化しており、そこでは持続的経済成長の達成が目標となっている。 報告内容をキーワードで表すと、「技術進歩」、「フェアな競争」、「インフラ整備への投資」、「経営効率化」である。 「技術進歩」とは、クリーンコールテクノロジー、ガスコンバインドサイクル、燃料電池システム、環境技術などである。「フェアな競争」とは、市場原理、市場の透明性、市場の開放、合理的価格形成などである。「インフラ整備への投資」とは、投資条件整備、資金調達(外資、民族資本)、輸送インフラ(パイプライン等)整備などである。「経営効率化」は、リストラ(コストダウン)、価格競争力強化、合併、顧客による監視、循環再生型物流への転換などである。 エネルギー安全保障実現の解決策をキーワードで示すと、「多様化」、「対話・協力」、「地域的枠組み作り」、「ナショナルインタレストの調整」である。「多様化」は、エネルギー源における多様化(石油→天然ガス、分散型化、原子力増強)、供給源の多様化(中東→アジア太平洋地域)である。「地域的枠組み作り」は、APEC枠組みでの共同エネルギー政策、IEAアジア版、ユーラトムアジア版、地政学的戦略立案などである。「ナショナルインタレストの調整」は、エネルギー資源をめぐる領土・領海紛争回避、冷戦後の民族紛争を起こさない外交、2国間エネルギー協力の積み上げによる多国間協力などである。

<プログラム>


2月15日(火)
基調講演
議長:牧野 力(新エネルギー・産業技術総合開発機構 副理事長/日本)
●世界のエネルギー情勢の将来とアジアの位置付け
 ルー・ノト(エクソン モービル コーポレーション 副会長/米国)
●アジアの安全保障とエネルギー
 小和田 恆((財)日本国際問題研究所 理事長/日本)

第1セッション
「アジアと中東石油」
議長:十市  勉 ((財)日本エネルギー経済研究所 理事/日本)
   ・アジアの石油安全保障とアジア諸国の課題
    河野 博文
    (通商産業省資源エネルギー庁 長官/日本)
   ・増大するエネルギー需要とアジア諸国間の協調と競合
    ジェファーソン・エドワーズ
    (ケンブリッジ・エネルギー・リサーチ・アソシエイツ 副部長/米国)
   ・イランの地政学的戦略とその炭化水素供給への影響
    アリ・マジェディ
    (駐日イラン大使、前イラン石油省 次官/イラン)

第2セッション
「アジアと天然ガスの将来」
議長:大橋 忠彦(東京ガス(株)常務取締役/日本)
   ・アジアの天然ガス市場の将来と域内供給
     ポテンシャル メガット・ザハルディン
    (シェルEPインターナショナルB.V.社 取締役/オランダ)
   ・アジアの天然ガス市場の将来とロシアのポリシーオプション
     エレナ・テレギナ
    (地政学・エネルギー安全保障研究所所長、
      前ロシア燃料エネルギー省 次官/ロシア)
   ・韓国LNG市場の選択肢と将来
     ソヌ・ヒョンボム
    (東北アジアエネルギーフォーラム 会長/韓国)

2月16日(水)
基調講演
議長:牧野 力(新エネルギー・産業技術総合開発機構 副理事長/日本)
●中東とアジアの戦略的パートナーシップ
アリ・イビラヒム・アル ナイミ
(サウジアラビア石油鉱物資源大臣/サウジアラビア)

第3セッション
「アジアのエネルギー安全保障と電力利用」
議長: 高橋 希一((社)海外電力調査会 専務理事/日本)
   ・エネルギー安全保障と原子力開発
    ジャン・クロード・プレネーズ
    (フランス電力公社 原子力発電部部長/フランス)
   ・アジアにおける原子力開発の将来
     勝俣 恒久
    (東京電力(株)取締役副社長/日本)
   ・アジアにおける電力インフラ整備とその課題
    シッティポーン・ラッタノパース
    (タイ電力公社 副総裁/タイ)

第4セッション
「アジアのエネルギー安全保障と環境問題」
議長: 深海 博明(慶應義塾大学経済学部 教授/日本)
   ・エネルギー安全保障上の石炭利用と環境問題
    ティム・マッケイ
    (産業科学資源省次官補/豪州)
   ・中国における石炭利用の将来とクリーンコール・テクノロジー
    李 洪勳
    (中国発展計画委員会基礎産業発展司 副司長/中国)
   ・省エネルギー・新エネルギーと地球温暖化問題
    谷口 富裕
    (東京大学大学院工学系研究科 客員教授/日本)

パネルディスカッション
「アジア地域のエネルギー安全保障」
議長:坂本 吉弘((財)日本エネルギー経済研究所 理事長/日本)
・メガット・ザハルディン
(シェルEPインターナショナルB.V.社 取締役/オランダ)
・アルデンドゥ・セン
(タタエネルギー研究所 特別研究員/インド)
・ ジェファーソン・エドワーズ
(ケンブリッジ・エネルギー・リサーチ・アソシエイツ副部長/米国)
・末次 克彦
(アジア・太平洋エネルギーフォーラム代表幹事/日本)